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2013/10/02

『谷崎潤一郎犯罪小説集』より「白昼鬼語」 感想



どうもお久しぶりです。
最近学校に行くと友達(たくさんいる)に「諦めないで」と顔を合わせるたびに言われるようになりました。どうしたんでしょうか。

さて、久しぶりの更新で何を書いていいか分かりませんが、さっき読み終わった小説の感想でも書いてみます。
『谷崎潤一郎犯罪小説集』です。


谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)
(2007/12/14)
谷崎 潤一郎

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まず、表紙がベリーキュートです。三冊くらいほしいですね。
『柳湯の事件』『途上』『私』『白昼鬼語』の四篇がはいっていますが、今回は『白昼鬼語』の感想のみ書きます。最終的なネタバレはしないようにします。


まずはあらすじ。

偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。そこに記された殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。神経衰弱気味の園村のことを心配し、ただの妄想だと思いつつも高橋は現場に赴くが、そこでは本当に「殺人」が行われていた。そこにいた殺人犯である女性に恋をし、彼女に近づく園村であったが、そのうち「彼女に殺されたい」と思うようになり、また「自分が殺されるところを唯一の友人である高橋に見ていてほしい」と願うようになる――


あらすじだけでご飯が四口くらいは食べられますわな!!!

簡単にいってしまえばこれは「園村っていう人はマゾヒストなのですネ」で終わるかもしれませんが、もっと美しい何かを読み取れると思うのです。
園村が高橋に送った手紙(彼にとっては遺書ですね)がこれまたすごいと思います。


「そこで、僕が君への頼みというのは外でもない。今夜の十二時五十分に、君は例の水天宮の裏の路地へ忍び込んで、再びこの間の晩のように、窓の節穴から僕の最期を見届けてはくれないだろうか。(中略)僕が生きていたとという事実は、ただ君の頭の中に記憶となって留まるだけなのだ。そう思うと、僕はなんだか淋しいような心地がする。せめては僕の生前の印象を、少しでも深く君の頭の中に刻み付けておきたいような気持ちがする。それには君に僕の死にざまを見て貰うのが一番いい。君が節穴から覗いていてくれるかと思うと、僕も意を安んじて心おきなく死ねるような気がする。」




ほう。
この手紙を受け取った高橋は、このことを警察に届けることはなく、友人の頼みを聞き入れ彼の「死にざま」を見に行きます。
ふむ。


まず、この園村と高橋というのは、あらすじを見ても分かるようにホームズ・ワトソンの関係であるといえます(作中にも言及があります)。
園村はかなりの神経衰弱に陥っており、推理中に落ち着きなく部屋中を歩き回ったり目が充血していたりするなどかなり探偵っぽいです(?)。それに対して高橋はそんな彼を気遣い、時には口論をしたりするのです。美しいですね。


「自分の死にざまを見ていてほしい、頭に刻み付けてほしい」と願う園村も園村ですが、その願いを聞き入れてしまう高橋も相当なものであると思います。普通であれば園村の命を助けようとするものなのでは……と思いますが、願いを聞き入れてしまう、というところに二人の友情があるのでありましょう。園村も高橋がそうすることは分かっているのです。先刻御承知ってわけです。


探偵役である園村は例によって、「全てのものに興味が湧かず、強い刺激を求める」という性質を持っています。
そんな刺激を求める性質から、園村は暗号を解読し、殺人事件が起こることを言い当てます。ここまではよくある展開ですし、今の探偵小説にも通じるものがあるでしょう。
しかし、園村は「自らも殺されたい、殺されるところを人に見られたい」という領域にまで行き着きます。探偵役が自ら殺されることを願う、こんな小説があったでしょうか!!!(よくわからないけどありそう)
つまり、探偵役としての性質が行き着いてしまった先に園村があるのではないでしょうか!!!
そしてその園村の生きざまならぬ死にざまを見る高橋という助手の存在。美しいですね。


というわけで、この『白昼鬼語』は、日本の探偵小説の中でも初期の作品ながら、完成してしまった探偵・助手の関係を描いた作品だといえるのではないでしょうか。
なんだかつらくなってきたので終わります。

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谷崎潤一郎 | Comments(0) | Trackback(0)
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